1/14/2010

出会いを綴り旅をする宿帳

黒と見まごう美しい夜空のようなミッドナイトブルーの革の手帳は、

女神たちの囁くゴシップ話に、いささか飽きたところ。

次のやどり場を模索しています。

その手帳は実は宿帳。

不思議なことに、手帳自らが旅を繰り返しつつ、

宿った先にたどり着く旅人の、多くの人の想いを受け止めてきました。

宿帳のページは無限です。

記念すべき最後の一葉・・・

想いをつづる旅人の誰もがそう思い、

もはや何も書くスペースは無いかのように、見えるのに、

次の誰かが手帳を手にとると、

最終ページは相変わらず真っ白く広がり


それを見た旅人は吸い寄せされるように、

そばに置かれた、大きな羽のついたペンを動かすことになるのです。

終わることの無いページは、まるで人生・・。

だから手帳はあてどない旅に出かけるのでしょうか。

そんな旅のような毎日が新鮮なためか、

紺色の表紙には、紫色のステッチがほどこされていますが、

時を経てなお、革は艶を失うことがありません。

健やかな少女を思わせる、その真摯な出で立ちに、

旅人の多くは、黙って通りすぎることはできないのでした。

手帳はさまざまな場所を旅し、

たくさんの人と想いと笑顔を交わすのが嬉しくてなりません。

中でも手帳のお気に入りは、

ベルギーで出会った、日出ずるところの東の国から来たおばあさん。

冒険のさなか、ちょっぴり不安な手帳の心をなぐさめてくれたその老婆が、

本当は魔法使いのおばあさんで、

「人との出会いを大切に」

「未知へ飛び込む勇気を持つこと」

という二つのメッセージを伝えるために、

わざわざ箒にまたがってやって来たことは、手帳は知るよしもなく・・。

けれども、彼女が残したメッセージは、

羽ペンのうす青いインクから、真っ白いページを通して、

手帳の魂へとしっかりと記されたことは、言うまでもありません。

魔法使いのおばあさんは今も、

満足げに遠い空の下微笑んでいることでしょう。

旅人の想いを受け止めながら、

無限の出会いを秘めた旅を続ける、旅の宿帳。

FHさん、それはあなたです。

12/08/2009

ローマ帝国の流れをくむ、ブロンズのロザリオ。

地中に眠るポンペイの遺跡から

発掘されたロザリオのことをご存じですか?

ヴェスヴィオ火山の大噴火の、

神をも裁く烈火に耐え抜いた、奇跡のようなロザリオは、

いぶしたブロンズでできていて

にぶい光を放つ金の十字架と、

小さな楕円のカメオがついています。

薔薇色のシェルの台座の上に鎮座する

灰褐色の大理石に掘られたのはミューズ。

その意思のある横顔が、持つものに勇気を授けます。

ロザリオが生まれたのは、おそらく2000年以上前のこと。

ポンペイが栄華を極めた時代より、

はるかかなた昔でありました。

いにしえの神に祈りを捧げ、

儀式を司る神官のものであったとか、

一族のしきたりと名誉を守るために戦い抜いた若き英雄が、

片時も離さずに身につけていたとか、

性におおらかなその当時、

神のみもとで禁欲的に生きた修道女の証であったとか、

数多くの伝説とともに幾多ものお役目を果たし、

ロザリオは今もなお、人々に我が身をゆだねます。

ロザリオが語りかけてくるのは、正義とエレガンテ。

自らを解放するために最も重要なのは、

正しく、そして気高く生きること。

人生を真摯に、そして高貴に生きなさい。

さすればすべてはうまくいく。

温かく柔らかな、薄くれなひの光とともに、

ロザリオはそう語ります。

そんな語りごとは、聞くに及ばじと、

人生を斜めに生きる愚かな者たちに対しては、

時には大胆に、十字架に隠し持つ棘をかざすことすら厭わない。

エレガントなその風貌からは

およそかけ離れた豪胆さをも持ち合わせているのです。

ロザリオのそんな圧倒的なオーラに敬服し、

ロザリオを手にしたすべての者の心の中には、

遅かれ早かれ敬虔で高貴な意識が芽生え、

人生における自堕落でちっぽけなプライドを手放し、

襟を正して生きようという気持ちになるのです。

ローマ帝国の流れをくむ、ブロンズのロザリオ。

城戸景子さん、それはあなたです。

11/08/2009

光を指し示す銀の羅針盤

芸術をつかさどる女神が天空から地上に降り立ち、
羅針盤に姿を変えたことをご存知ですか。

その羅針盤は輝く銀色で、

生き生きとした頬の色のような、
うっすらとした紅色の大理石の文字盤と、
天空の夕映えを思わせる柔らか茜色の房飾りが、
かつて女神であったことを思い起こさせてくれます。

羅針盤の針が指し示すもの、
それは光です。

何気なく握り締めて初めて、
光の存在を知るものがいます。

また、
ある者は、見失った光を求めて、
ある者は、光のありかを確かめるために、
ある者は、光の存在を知るために、

羅針盤を懐に旅をします。

どんな人のもとでも、動じることはなく、
それぞれの人生の光、幸福という名の光のありかへと、
羅針盤はいざなっていくのです。

ごくまれに、未熟な子供の手に渡り、
くるくると振り回されることもあり・・・、

羅針盤にとって、それはちょっとした事件ではありますが、

そんな時でも、勝利の美酒に酔ったマタドールのように、
しばしの円舞を楽んだのち、また静かに光ある場所を指し示し、
自らもまた銀色の光を放ち続けます。

女神の生まれかわりである、輝く銀の羅針盤、
FTさん、それはあなたです。

(40代 学校経営者 女性)