その兎は、なぜかやたらに飛び跳ねてしまうのでした。
行き先がわからず、
やみくもに進む自分に焦っていたのでしょうか?
周りの動物たちの走る姿と違うのが、
不安だったのでしょうか?
「時間が無い!」と、
ただただ、地団太を踏んでみたり、
「人参は足りなくなったりしないだろうか?」と、
意味もなく畑のまわりをうろうろしたり、
不安をかき消すつもりで、
ぴょんぴょん跳ねまわったり・・
いつもいつも飛び跳ねているけれど、
一向に楽しくありませんでした。
そんな兎を見て、月がいいました。
「そんなに跳ねなくても、
私の光はあなたにちゃんと届くわよ」
太陽が言いました。
「私の温かさを感じてほしいのに、
そんなに跳ねてちゃ暑くてバターになっちまうよ」
雨雲がいいました、
「天からの恵みの雨を、蹴散らしてしまうじゃないか」
風が言いました。
「君の跳ねる音はすごいけど、
ボクのそよぎと歌にも、たまには耳を傾けてもらえないだろうか」
最後に、虹が言いました。
「大地に足をつけて、ゆっくり息を吸って、
のんびり空をながめてご覧なさい」
・・・
はっと我に返った兎は、石に腰かけて、
ゆっくり息を吸って、
ただただ、七色の光を感じてみることにしました。
不安と焦りの虫がすうっと、
光の彼方に消えていき、
温かい力が、体の中を流れていくような気がしました。
そんな兎の頭上を越して、ドラゴンが先を行きました。
蛇・馬・羊がその後を続きました。
猿も鳥も犬も、兎を追い越して行きました。
なぜか、兎はあわてませんでした。
どのくらい時間が経ったでしょうか。
猪が行き過ぎ、ネズミが駆け抜けて、
牛の地響きが遠のき、虎が走り去った土煙りが消えた頃、
兎はようやく、立ち上がり・・・
しっかりと地面を蹴って、大きく跳躍しながら、
目の前に広がる道をまっすぐに進んでいきました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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